九州に蘇る幻の客車が秘めるロマン。「或る列車」が今蘇ったわけ
『 或る列車 』って知っていますか? 「或るって言われてもどんな列車か教えてくれないと何かわからないよ」…と思われれるかもしれませんが、「或る列車」という名前こそ、かつては幻の客車と呼ばれ、そして2015年に現代へ蘇った列車の名前そのものなんです。
蘇った「幻の客車」 に込められたロマン
この列車が幻と言われるゆえんは約100年前、1906年に遡ります。当時の九州鉄道がアメリカのブリル社に発注し完成したものの、九州鉄道の国有化により充分な活躍の機会がないまま終わった列車「九州鉄道ブリル客車」。
当時の日本で最も豪華な設備を備えていたと言われ、その豪華絢爛さと歴史から幻の客車といわれていましたが、鉄道雑誌で「或る列車」と紹介されたことにより鉄道ファンから広く知られる存在となりました。
日の目を見ることのなかった或る列車が、2015年に復活した経緯を少しご紹介しましょう。
実は当初、2013年に運行が予定されていたJR九州の寝台列車、クルーズトレイン「ななつ星in九州」(以下「ななつ星」)よりも気軽に乗れるスイーツ列車というコンセプトで新しい列車の計画が進んでいました。ところが、いざななつ星の運行が開始されるやいなや、あまりにも人気が高く「乗りたいのに予約が取れない」という意見が多かったため、列車のコンセプトを豪華絢爛なななつ星に寄せることになったのだとか。ちなみにななつ星は一泊二日で一人15万円〜40万円と決して…決して安くはないのですが、予約倍率は今年の夏の時点でも平均22倍はくだらなかったと言います。
JR九州の未来をかけて生まれた贅沢な寝台列車・ななつ星の後輩列車をつくる計画の中で、最終的に持ち上がったのが、幻と言われた或る列車の復活だったのです。
そんな経緯で復活計画がなされた「或る列車」は、鉄道模型愛好家で世界的な鉄道模型の神様といわれた故・原信太郎氏の模型を元に、ななつ星を手がけた水戸岡鋭治氏がデザインし、「原鉄道模型博物館」副館長を務める原健人氏が監修し完成しました。「或る列車」は、列車に関わる男たちの手によって見事に現代に蘇ったのです。
世界、日本、そして九州の色・形・素材に匠の技を組み合わせて作られた列車はまさにロマンの集大成。車両の外観デザインは当時の「或る列車」を手本に、金と黒、唐草模様をあしらい、アレンジが施されました。
乗るなら旅行会社のツアーがおすすめ
さて、そろそろ乗ってみたい気持ちがうずうずしてきたのではないでしょうか? 2015年7月に公開され運行が開始した「或る列車」は8月から10月まで大分 ~由布院・日田・天ヶ瀬間を運行。11月からは長崎〜佐世保間を運行する予定で、約2時間をかけてのんびりと贅沢な空間から車窓を眺めスイーツを楽しむ基本プランの料金は大人1人2万円〜3万円。
いますぐ予約したいところですが、さすがは人気寝台列車・ななつ星の後輩、残念ながら期間中の基本プランは全て満席とのこと。ただ、各旅行会社が3日間かけてのんびりと九州をめぐる特別ツアーをたくさん組んでいますので、そちらもチェックしてみてください。
約100年の時を超えて蘇った「或る列車」。車窓から眺める景色は、いつも乗っている列車とは比べものにならない程ロマンが詰まっているはずですよ。